2000年。11thアルバム。
所謂"Dark Trilogy"の完結編となる通算11枚目のアルバム。
日本盤の帯の文句は、『"これまででも最も完璧なアルバムになった"byロバート・スミス 四半世紀のキャリアの持続、創造力の進歩、確固たる音楽的アイデンティティーの維持。今、キュアーへの絶大なリスペクトを贈る!!!』
前作"Wild Mood Swings"の商業的な失敗からやる気を失くしていたRobert Smithは、以前から40歳になったらThe Cureをやめる、と公言していたこともあり、この作品を最期にバンドを解散させようと考えていた。
そこで、ラストアルバムに相応しく、特に歴代のアルバムの中でも異彩を放っていた"Pornography('82)"、"Disintegration('89)"を発展・継承した内容となるように、計算の上で制作された。
全体の統一感のために、各楽曲のキーやテンポが合わせられているという。
そんなわけで非常に完成度が高い内容で、前出の2作のアルバムが好きな人間であれば、きっと気に入るであろう出来。
特に、シングル・カット及びプロモーションビデオが存在しないという潔さ、始まって2曲目が終わるまでに20分を要する、などというのも個人的にポイントが高い。
オープニングナンバー"Out Of This World"は、ジャズっぽいリズムを取り入れたり、間奏でピアノが前面に出るなど大人の雰囲気が漂う、歴代の楽曲の中でも屈指の美しい曲。
初めてこの曲を聴いた時は、遂にCureの終焉か、と非常に感慨深かった。
不思議に悲しくはなかったけど...。
"Watching Me Fall"はRobert自らが半自伝的内容と語る10分を超す大曲。
ここに出てくる"Tokyo"とは、実在の東京ではなく、非現実的な存在の象徴と思われる。
(Robertは度々、日本に来ると非現実的な感覚に襲われる、と語っている。)
"Maybe Someday"は本アルバムの中では最もアップテンポの曲で、プロモーション用のみでシングルカットされた。
アップテンポとはいっても、歌詞はひたすら終焉を予感させるフレーズの繰り返しであるのだが。
"The Last Day Of Summer"はRobertとSimon Gallupによる共作で、6弦ベースのフレーズが涙腺を直撃する究極のメランコリックナンバー。
ラストナンバーのタイトル曲"Bloodflowers"では、"Pornography"と"Disintegration"のリズムを意識的に織り交ぜたという、三部作の終焉に相応しいJasonのドラミングが聴ける。
各楽曲において何度も繰り返される"終焉"のフレーズ。
アルバムリリース当時のシーンでは、The Cureはほとんど忘れ去られていたというか、過去の遺物のような存在とされていて、風当たりは結構冷たいものだったと思う。
レコード会社もThe Cureのラストってことを前面に出してなんとか売ろうとしていた。
しかしその後、いつものRobertの気まぐれでバンドは存続になり(公式に発言した解散宣言をマスコミのせいにして無かったものにした!)、21世紀に入ってからは若手バンドを中心にリスペクトが相次ぎ、まだまだ現役で健在である。
ちなみに、日本盤と豪州盤は5曲目にボーナストラックが入っているが、この曲だけ全体から浮いていて、明らかに蛇足だと思う。UK盤かUS盤がベスト。
収録曲
01: Out Of This World
02: Watching Me Fall
03: Where The Birds Allways Sing
04: Maybe Someday
05: Coming UP*
06: The Last Day Of Summer
07: There Is No If...
08: The Loudest Sound
09: 39
10: Bloodflowers
* Bonus track on the Australian and Japanese versions
参加メンバー
Robert Smith (Voice + Guitars + 6String Bass + Keyboards)
Simon Gallup (Basses)
Perry Bamonte (Guitars + 6String Bass)
Jason Cooper (Drums + Percussion)
Roger O'Donnell (Keyboards)
# Dark Trilogy について
本作で一応の完結をみた"暗黒三部作"。
三作の根底に流れるテーマは同一ながら、それぞれ表現の仕方は違う。
"Pornography"は若さに起因する死へのオブセッションと行き場のない怒り。それゆえ、内容は最も攻撃的で混沌としている。
"Disintegration"は迫りくるカタストロフィと死への甘美な憧憬。死に対しロマンティックな感情を抱いているところがまだ若い証拠であろうか。
そして"Bloodflowers"では死との折り合い。全編に漂う余裕は、すでに死との折り合いがついていており、今さらじたばたしても仕方がない、という諦めに似た観念から来ていると思われる。
0 件のコメント:
コメントを投稿