2009年2月1日日曜日

RAEL/Birth Of Monsters

1990年5月25日リリース。





RAELは元PINKのキーボーディスト・ホッピー神山と元The Roosterzのギタリスト・下山淳のユニット。

ゆくゆくはバンド形式になることを想定されており、メンバーには二人に加えて元Dead Endの湊雅史(Dr)と下山アキラ(B、淳の実弟)が確定していた。

というわけで本作にはこの四人の演奏も含まれている。

このアルバムのリリース後、二人は袂を分かつことになるが、それに至った経緯にはいくつかの説がある。

ネットで見つけた情報としては、ヴォーカルにスエキチガイ(末気狂い)を推す下山と町田町蔵(町田康)を推すホッピーとで意見が合わなかった、というものがあった。

この辺の経緯については、ホッピーの音楽王リリース時(91年7月)のインタビューで以下のように語ってる。
(ホッピーは本人も言っている通りその場限りの適当なことをよく喋ってるので、鵜呑みにするわけにはいかないところが注意点。)
「基本的に僕は嘘つきなんで、昨日言ったことは今日ないみたいな感じなんですけど。まあ、それはさておき、ご承知の通り下山と僕でずっとやっていたバンドっていうのがあって、時間がだいぶ経っちゃったんで、やっぱり作品をのこさなくてはいけないということで自宅録音的なもので出したのがRAELだったんです。バンドを作る作業も別にやっていて、もうちょっとでバンドが出来上がるかなという矢先に僕がソロになってしまったんですけど。それもある日突然、ふと歩いていたら「自分はソロになりなさい」という宇宙的レベルの神の啓示があって、すぐその気になっちゃうもんだから、「あっ、そうか」と思ってその翌日くらいにみんなに「というわけなんで明日からは僕は一人にならしてもらいます」と伝えたのが昨年の8月の頭だったんです。」
この後下山は実弟アキラ、湊、スエキチガイを引き連れ60/40を結成。

ホッピーはソロ活動(音楽王シリーズ)を経てゴッド・マウンテンレーベルを立ち上げ、アンダーグラウンドシーンをメインに活動することになる。

(メンバー的には60/40がRAELの後継なんだけど、サウンドはホッピーの音楽王の方が近い。ホッピーの影響力が強かったということなのか。)

町田町蔵がこの時RAELに入っていれば、もしかしたら後年布袋に殴られることもなかったかも知れない....おっと閑話休題。

というわけで、本作は本格的なバンド活動を視野に入れた中での準備期間で制作されただけあって、あえてバンドではできないような楽曲を中心に構成されている。

音楽王2リリース時の記事に、その制作方法の縛りが3つだけだが書いてあったので、以下に紹介しておく。
1曲に1箇所は必ず変なことをする
ロックンロールはやらない
タテノリな曲に生のドラムは使わない
ヴォーカルは下山とホッピーがほぼ半々に担当し(おそらく自作の曲)、1曲のみゲストの北川晴美が担当。

宇辺セージのメランコリックな歌詞、ホッピーの重厚な楽曲と美麗な歌声、下山のシニカルな楽曲が奇跡的なバランスで構成され、この後の二人の活動に比べると圧倒的に聴きやすく、ポップさとアーティスト性が実にうまく配合された非常に完成度の高い作品と思う。

欠点としては二人の楽曲の色がはっきりと出すぎていて、統一感が全くないところか。

個人的にはそれが良いんだけど。

簡単に全曲紹介してみる。(作曲者は推定)

"Summer & New Moon"
宇辺セージ作詞。ホッピー作曲。
バンド編成でレコーディングされている。
宇辺の十八番といえる郷愁を誘う歌詞と、ホッピーのヴォーカルのマッチ感が素晴らしい。
シンセの比重が高いが、RAELで1曲選べと言われたら迷いなく本楽曲を選ぶ。

"Super Creature"
ホッピー作曲。これもバンド編成。

"ミントの森"
下山作曲。ここまでバンド編成。
後半部のホッピーのシンセソロから下山のギターソロにシームレスに移行するところはRAELならではの見せ場だろう。

"Link I ~ UNYDO"
インストゥルメンタル。ホッピー作曲。

"MAMA ma"
下山作曲。シニカルな歌詞が下山らしい。
今となってはステレオタイプの内容だが。

"時は過ぎて ~ The Time Goes By ~"
宇辺セージ作詞。ホッピー作曲。
これまたセンチメンタルな歌詞とホッピーの美声、下山の優しいアコースティックギターが絡んだ好曲。

"LINK II ~ Love Song"
インストゥルメンタル。ホッピー作曲。

"in you"
下山作曲。
ノリのいい曲だが、制約通りリズムは打ち込み。

"Arrive to my life"
ホッピー作曲。

"LINK III ~ Birth Of Monsters"
インストゥルメンタル。ホッピー作曲。

"Yeah!Yeah!Yeah!Yeah!Yeah!"
下山作曲。
これも制約通りリズムは打ち込み。
楽曲自体はかなりロックしていると思うが、ロックンロールとは非なるものなのか。

"Divine Core ~いつも自分のうちにすべてはあり、自分はすべてをすでに知っている~"
ホッピー作曲。
いきなりブラックミュージック調で、サブタイトルも哲学風という異色の曲。

"Ocean"
ホッピー作曲。PINKの"Icon"や音楽王の"A Pillow Of Colors"のような、重厚な楽曲。

"Arabian Mirror ~ Sensual Door"
宇辺セージ作詞。ホッピー作曲。
ヴォーカルは北川晴美。

"Sun, Rains & Radio"
下山作曲。哀愁溢れるブルージーな曲。


邦楽で一番好きなアルバムがこれ。

初めて聴いたのは多分まだ高校生の頃だったと思うが、未だに飽きずに聴いてる。


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